まかない係雑記
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Nagoya hakugaku-hompo
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Mon, Dec 13 2004
負け犬→オニババではない
 毎日新聞家庭欄で『オニババ』って何?という企画記事が掲載された(松村由利子記者、12月9日・10日朝刊)。
【妊娠、出産しないと、女性はオニババになってしまう そんな呼びかけをした本が売れている。『負け犬の次はオニババ?』と反感を抱く人もいるだろうが、果たしてどんな意図で書かれたのだろうか。...】
こんなリード文で始まる記事は、『オニババ化する女たち』の著者・三砂ちづるさん、『結婚の条件』の小倉千加子さんをはじめ計6名の専門家のコメントを載せ、駆け足ながらいろいろな問題点を指摘しているとは言える。でもイヤな予感がするのである。

「負け犬」が話題になったときに「既婚者=勝ち犬」VS「未婚者=負け犬」として、女同士の対立があるかのように「お宅の娘は負け犬?」みたいな特集を組む雑誌があった。この記事も、出産未経験者(未婚の場合が多い)VS出産経験者(既婚の場合が多い)の対立を描き出し、出産未経験者をダメだと切り捨てるなどと、女の生き方の対立があるかのようにマスコミが煽って、妙な「論争」が始まってしまうのでは、と心配になった。

 確かに三砂さんの本で「卵子にも個性がある...」とか、「非常にいいセックスの経験は...宇宙を感じるような経験ですので...」などと書かれるとちょっと引く。セックス、出産が女の身体に与える良い影響を大げさに言い過ぎているのではないかとも思う。また、フェミニズムにケンカを売っているように受け取られかねない部分もある。が、それでも「女性の身体性が失われている」と投げかけた問題は大きいと思う。女だけでなく男にも。それに三砂さんは、決して、出産すればオニババにならないと言っているわけでは「ない」のだ。そこんところヨロシク。

 たとえ経産婦であってもオニババ化することだってある。例えば、ヨン様に群がるおばさんたちの多くは出産を経験していると思うが、ここに大量のオニババ予備軍がいるといわざるを得ない。ヨン様の車に殺到するフィーバーは尋常ではない。(一説にはサクラがいたとも言われるが)。また、タダ(あるいは安い)と聞けば、とくに欲しくなくても、我先にと人を蹴散らして群がるおばさんたち。浅ましい姿をさらして恥じることがない。「ここは地獄の一丁目か?」と見まごうばかりのオニババぶりだ。

 『オニババ...』で、なるほどと思ったのは、【今の60代、70代の日本の女性あたりから、性と生殖、女性の身体性への軽視が始まったのではないでしょうか】ということ。三砂さんは「今子供を産む世代の母や祖母である60代、70代の戦後育児世代は、それまでの世代が経験してこなかった多くのことを通り抜けて来た。企業戦士の妻として家を守り、子育てという分業をこなしてきた。経済的にはレベルアップしながらも、夫婦はお互いに満たされていない。何かというと夫への不満をつぶやく。夫婦として葛藤を抱えたままの生活が続いた家庭の子どもたちに、そのような母の結婚観、出産観、子育て観が影響している」と言う。上の世代と切れているのは、何も今に始まったことではない。今の60代、70代と、その前の世代とのギャップはとても大きいのである。

 だとすると、非婚にしても少子化にしても、女性の身体性の問題にしても、すでに60年、70年前に最初のレールが敷かれていたわけで、簡単に処方箋が見つかるようなものではないだろう。三砂さんが「世代をつなぐ」と力説しても、実際どうやったらいいのか、なかなか難しい。

 三砂さんは海外で疫学専門家として女子の保健について取り組んできた現場の人であり、現場の感覚と自分の体験でものを言っている。だから読み物としてとても面白いし、逆に、論拠として弱いことにもなる。大体、性や恋愛にまつわることは、語るのが難しい。個々の体験や感覚に左右されるので、一般論で語ると「本当のこと」は逃げていってしまう。だから、何度でも見方を変え、行きつつ戻りつつ語るのがよろしいかと思う。センセーショナルなネーミング「だけ」に反応した、浅い特集記事は勘弁してほしい。職場で独身の女性に対して「子ども産まないとオニババになるらしいって」と無神経に言ったり、「お局さま」の代わりに「オニババ」と呼んだり、新たなセクハラ、パワハラの元にはなってほしくないなあ。でも、きっとそうなるんだろうなあ。

Posted by HH at 00:19 JST
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