まかない係雑記
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Nagoya hakugaku-hompo
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Wed, Sep 1 2004
夏の終わりに「一度死ぬ」を考える
 アテネオリンピックが終わった。本舗スタッフ・浦島太郎さんがウェブ日記で憂えているように、テレビや新聞の感動安売り、ワンパターンぶりは確かにうんざり。アニマル浜口が「気合いだ〜」と娘を送り出したり、会場で前のめりに応援する姿をNHKが好意的に取り上げているのを見て、目眩を覚えた人は多いと思う。ま、でも視聴者も目が肥えてきているから、素人キャスターの無意味なインタビューになるとチャンネルを変えたりしながら、それなりにオリンピックを堪能したのではないだろうか。私は、たまたま見た女子バレーボールの決勝、中国対ロシアの白熱する試合に目が釘づけ。いやー、中国恐るべし。
 8月30日には、NHKスペシャルでいち早く五輪特集をやった。本放送の浮かれぶりに比べると、じっくりと構えたプチ・プロジェクトX風で、イラクのサッカー選手や、北島のライバルを揺さぶる精神戦など内外の選手のドラマを写し出していて、なかなか見ごたえがあった。
 私は、そのドラマの中に、銅メダルを取ったアメリカのシンクロチームのタマラ・クロウ選手が出るだろうと期待していたが、それはなかった。毎日新聞8月28日夕刊によると、クロウ選手は、昨年2月に自分の運転ミスで事故に遭い、同乗していたボーイフレンドを死なせてしまった。自身も重傷を負ったのだが、過失致死の罪に問われ、懲役90日の実刑判決。判事の配慮で執行は五輪後となり、帰国後に収監されるとのこと。その辺、日本より厳しいように思われる。
 ヤワラちゃんのご主人による「勝ったら子づくり」という強力なニンジン、じゃなくて励まし、柔道の谷本選手の思わず抱きつく古賀コーチとの師弟愛、阿武選手の兄による献身、野村選手の美人妻や、競泳の山本選手の千葉すずによる嫁パワー、それからオカルトっぽい、長嶋さんのユニフォームってのもありましたが、大舞台になればなるほど、身近な人が支えている。「事故のことが頭を離れた日はなかった」というクロウ選手。胸の内の悲しみはどれほどだろうか。
 一方、愛くるしさに国民がみんなテレビの前で目を細め、「ターッ」だか「シャーッ」だかのかけ声が謎を呼ぶ卓球愛ちゃん。1戦目を友と闘って勝ち上がったとき、次の試合前に「前の試合で一度死んだ。新たな気持ちで今度の試合に臨む」というようなことを言った。この言葉は、仲間内でも話題になった。「あれはコーチか誰か大人がそういったに違いない」「いや、それでもその言葉はすごい」「一度死ぬってどんなんだろう」などなど。
 話が飛ぶが、今私は鈴虫の世話で大変忙しい。知人から卵セットが送られてきたのが7月の初めで、ようやく成虫となり涼しげに鳴き始めたところ。友人知人に配りまくったがまだ50匹以上はいる。今年で3シーズン目だが、先日、始めて最後の脱皮の一部始終を見た。頭を下にした鈴虫の背中の色が薄くなり、少しずつ盛り上がる。忙しく動いていた触覚が動きを止めたかと思うと、中から少し透けている体がズルッと出てくる。しばらくすると新しい触覚と足が動き出し、さらに時間をかけてお尻と後ろ足が出てくる。最後に天使の羽のようにクシュクシュになって背中についている白い羽が徐々に広がって伸びてくる。全部見届けると小一時間はかかる目くるめく脱皮ショウ。
 脱皮というのは、一度死ぬことだったんですね。服を脱ぐというような簡単なものではなく、さっきまで動いていた触覚や足が死んで、新しい触覚と足が出てくるのである。そして身体は前より大きくなる。
 愛ちゃんのいう「一度死ぬ」というのは、もしかすると脱皮に近いのかもしれない。そういえば「一皮むけた」という表現もある。一皮むけたというのは結果であって、その過程は、一度死ぬくらいのことが起こっているに違いない。
 自分だけでは自分の強さや弱さはよくわからない。他人との衝突によって始めて今の自分の限界を知る。私もこのところ他人との衝突により、へこむことが多い。そうか。脱皮すればいいんだ。脱皮、脱皮!!ま、やろうと思ってできるものでもないだろうが。でも、自分の現状のスタイルに限界が見えるということは、ある意味喜ばしいことなのかも。「一度死んで」次に行けるかもしれないから。
 そんなミクロな事情はともかく、クロウ選手は、本当に死にかけたのだし、恋人を自分の過失で喪い、死ぬよりつらかったに違いない。「一度死んだ」はシャレにならない。でも、チームメートが「これからつらいと思うが、チームで弁護士費用の一部をカンパしたりして精神的な支えになりたい。大会が終わっても私たちは友達」と話していることは救いだ。名前は「苦労」だけど、それを分かち合える友達がいて本当によかった。←ちょっと涼しくなりました?

Posted by HH at 20:26 KDT
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